好きと言えなくて
お昼休みになり、私は、太くんからもらったクロワッサンを、みんなに配った。

うららちゃんは、妊娠が発覚してから、お弁当を持参するようになった。若くてもお母さんなんや、と、感心した。

「うららちゃん、クロワッサン食べられる?」

「はい、ありがとうございます! まだ悪阻もないんで……」

私は、いつものように、お茶をいれた。

「それにしても……あんなイケメンを振るなんて、さすが葉子さん」

「違う違う。振られたの!」

「振られたんですか? でも、ね、もし……やり直したいって言われたら、どうします?」

「えっ……」

太くんが、やり直したいって言ったら? 爽やかな笑顔を思い出し、鼓動が早くなった。

「正義さんもいいですけど、パン屋のイケメンも捨てがたいですね」

「な、なにを言ってんの? 太くんは彼女いてるよ、きっと」

「いやいや、きっといないですって!わざわざ店に、葉子さんの顔が見たくて来たんですよ!」

「そんなわけない」

「私の勘は、結構当たりますよ?」

< 75 / 93 >

この作品をシェア

pagetop