好きと言えなくて
昼休みが終わった頃、正義が帰ってきた。

「お疲れ、正義! これ、おやつに食べや」

私はそう言って、太くんの店のクロワッサンを正義に渡した。

「これ……川之江さんの店の?」

真顔で私に聞く、正義。

「そう! おいしかったよ」

「あの人、なにをしに来たん?」

真顔の正義が、ちょっと怖かった。

「なにをしに……って、備品を買いに来ただけやで?」

「前は、ネット注文やったのに……葉子さん、川之江さんと、なんか約束してたんちゃう?」

「は? 正義、なにを言ってんの?」

なんで私が、太くんと約束なんかせなあかんのよ? カチンときて強い口調になった。

「まだ、好きなん? 川之江さんのこと」

「は?」

「高校時代に付き合ってたんやろ?」

「ああ、そうやで? それがなにか?」

太のヤツ、正義に話したな? 余計なこと言いよってに! バレてるならしゃーないな……と、堂々と言った。

「葉子さん、川之江さんと……やり直したいって、思ってるんとちゃうの?」

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