好きと言えなくて
「夕方の分のパンを焼き終えてメール見たら……葉子ちゃんからの、ラブメールやった」

そう言うと、私の隣に並んで座った。

「お店は、大丈夫なん?」

涙を拭いながら、聞いてみる。

「店番は、妹がしてるから。オレが店出す……って言ったら、会社辞めて手伝うって。アイツ、相当なブラコンや」

ああ、年子のブラコン妹。太くんを追っかけて、同じ高校に入って、彼女の私にヤキモチやいてた、あの妹……。

「大人になってもブラコンなんや……」

思わずふふふと笑った。

「ところで葉子ちゃんは、仕事さぼってなにをしてんの?」

「さぼってへん! ちょっと……調子が……悪いだけや」

「……だから、泣いてたんや?」

「泣いてへん!」

強がる私の手を、太くんがそっと握った。男らしい、大きな手。今は、パンを作る、職人さんの手。会わないうちに大人の男性になった、優しい手。

なんでか、涙が出た。

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