好きと言えなくて
「葉子ちゃんは……ホンマに好きな男には……『好き』と言われへん子や……」

ホンマに好きな男……。

「その証拠に……オレは付き合ってた頃、一回も『好き』って言われたことがなかった」

「そ、それは高校生やったし、恥ずかしかったからで……もう三十路やで? 好きくらい、言えるわ」

私がムキになって言うと、声をあげて笑った。

「性格なんて、そんな簡単にかえられへんもんや。それに……」

「それに?」

「あ、これは言いたくない。悔しいから!」

「悔しいって、なに? ホラ、早く続き……」

「オレは萎えたから、ええわ。ほな、帰ろか?」


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