好きと言えなくて
帰りの車は、無言やった。そのうち、待ち合わせをした公園が近づいてきた。

……が、そのまま素通りした……。

「あ、いいよ。家まで送らんでも、ここで降ろして……」

「誰が、家まで送る……って言った?」

え!? どこに連れて行かれるんやろ?
しばらく走ると、先日、結婚式があった教会のあたりに来た。そういえば、太くんはこの近辺が地元やねんな……。

「あ、これ、うちの店」

太くんのパン屋さんも通り過ぎ、車は住宅街に入っていった。そして、一軒家の前に車を止めた。

「はい、降りて」

「え? ここで?」

言われるまま車を降りると、太くんは車を急発進させた。

「え! ちょっと! 太くんっ?」

こんなところで降ろされても!

目の前の一軒家に、灯りが灯っていた。
庭には、一台のバイク……ふと、表札に目をやった。

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