好きと言えなくて
「葉子さん」
名前を呼ばれても、足元に視線を向けたまま……。
「なんで、来てくれたん?」
なにも、応えられへん。
「入って? 誰もおらんから……」
恐る恐る顔をあげて、正義の背中についていった。
「おじゃまします……」
正義の言う通り、他に人の気配はなかった。古く広い家屋で、テレビにちゃぶ台くらいしかなく、殺風景な印象だ。
「座って?」
正義は、珠暖簾をくぐり、隣の部屋に入っていった。隣の部屋はおそらく、台所だろう。
お茶をちゃぶ台に出すと、正義は私の向かいに座った。
「き、来たくて来たんやない。太くんに連れて来られてん……」
正義の顔を見ることもできずに、ブツブツと呟く。
「なんで?」
「私が太くんに……好きって言ったから」
正義が、私をみつめている……と言うか、睨んでいる気がして、視線をちゃぶ台からさらに下の畳に向けた。
「わ、私……帰るわ。も、もう私は」
正義の彼女でもなんでもないし……そう言おうと思ったけれど、言葉より先に涙があふれてしまった。
「葉子さん」
名前を呼ばれても、足元に視線を向けたまま……。
「なんで、来てくれたん?」
なにも、応えられへん。
「入って? 誰もおらんから……」
恐る恐る顔をあげて、正義の背中についていった。
「おじゃまします……」
正義の言う通り、他に人の気配はなかった。古く広い家屋で、テレビにちゃぶ台くらいしかなく、殺風景な印象だ。
「座って?」
正義は、珠暖簾をくぐり、隣の部屋に入っていった。隣の部屋はおそらく、台所だろう。
お茶をちゃぶ台に出すと、正義は私の向かいに座った。
「き、来たくて来たんやない。太くんに連れて来られてん……」
正義の顔を見ることもできずに、ブツブツと呟く。
「なんで?」
「私が太くんに……好きって言ったから」
正義が、私をみつめている……と言うか、睨んでいる気がして、視線をちゃぶ台からさらに下の畳に向けた。
「わ、私……帰るわ。も、もう私は」
正義の彼女でもなんでもないし……そう言おうと思ったけれど、言葉より先に涙があふれてしまった。
「葉子さん」