好きと言えなくて
「あ! 誰か帰ってくるやろうし……キスしてる場合やないな」
恥ずかしくなって、咄嗟に口走った。
「大丈夫。オレ、家族いてないねん」
「え……」
「母さんは、オレの命と引き換えに亡くなって。男手ひとつで育ててくれた父さんも、高三のときに。それでオレは卒業と同時に、ナニワヤで雇ってもらってん」
今まで正義が家族の話をしなかったのは、そういうことやったんか。こんな広い家にひとりで住んでいるのも……。
「そっか……ほな……」
私は、自分から正義を引き寄せて抱きしめた。正義は、いつも明るく笑顔でいるけれど、家に帰れば広い家でひとりぼっちなんや……。
私が一緒にいてあげやな、あかん。
私が、守ってあげやな……そう思った。
「正義、私のこと……好き?」
「葉子さん、めっちゃ好き」
抱きしめた耳元で囁くと、すぐに返事があった。
「ありがとう。ほな……」
好きな人に『好き』も言えない私が、自分でも驚くようなひと言を囁いた。
「えっ!?」
私からのひと言に正義は驚きのあまり飛び上がった。小動物のような目をくりくりさせながら。
「もう二度と言わへんよ、こんなこと」
恥ずかしくなって、咄嗟に口走った。
「大丈夫。オレ、家族いてないねん」
「え……」
「母さんは、オレの命と引き換えに亡くなって。男手ひとつで育ててくれた父さんも、高三のときに。それでオレは卒業と同時に、ナニワヤで雇ってもらってん」
今まで正義が家族の話をしなかったのは、そういうことやったんか。こんな広い家にひとりで住んでいるのも……。
「そっか……ほな……」
私は、自分から正義を引き寄せて抱きしめた。正義は、いつも明るく笑顔でいるけれど、家に帰れば広い家でひとりぼっちなんや……。
私が一緒にいてあげやな、あかん。
私が、守ってあげやな……そう思った。
「正義、私のこと……好き?」
「葉子さん、めっちゃ好き」
抱きしめた耳元で囁くと、すぐに返事があった。
「ありがとう。ほな……」
好きな人に『好き』も言えない私が、自分でも驚くようなひと言を囁いた。
「えっ!?」
私からのひと言に正義は驚きのあまり飛び上がった。小動物のような目をくりくりさせながら。
「もう二度と言わへんよ、こんなこと」