幸せになっていいですか
彼へのきもち
6時ホテルのロビーで待っていると、加奈子がやってきた。

「良樹さんと一哉さん先に行ってるって」

「わかった」

お店の人に案内されて、夜景の見える個室だった。

良樹さんと一哉さん何だか深刻そうに話をしている・・・

「お待たせ」

「あっ」

驚くような返事が返ってきた。

「来てくれたんですね」

「はい。今夜だけですよ」

料理と飲み物が運ばれてきた。

「とりあえず乾杯」

「乾杯」

緊張することなく食事がすすんでいく。

(・・・何か楽しい・・あれ?なんか心地いい・・・)

ぼーっと考えている真理に加奈子が、

「何?何か嫌いなものでもあった?」

「ないよ。これ美味しいよ。 久しぶりに美味しい夕食だなって」

「よかった~。あんたの美味しいって言葉、久しぶりに聞いた」

「そう。そんなに言ってなかった?」

(食事が美味しく感じてなかったなぁ・・飲んでばかりで・・・)

「真理。夕食あまり食べないんです。お酒ばかりで」

「だから時間があれば何か食べさせてました」

「お酒だけじゃ体に悪いですね」

「真理ちゃん。食べるより飲むだからな」

「真理。私が結婚したら誰も相手いなくなるよ。誰か気にしてくれる人見つけなきゃ」

「大丈夫。誰かが付き合ってくれると思うから」

「みんなそんなに甘くないよ」

「そうだね・・・」

(そっか・・・みんな色々あるもんね・・・)

「一哉さん真理の誘ってくれますか?」

「まっ真理さん?僕は嫌われていますからね」

(嫌いじゃない・・あれだけ、優志のことで悩んでいた人だから・・でも・・・)

「真理は?」

「出会って、数日。そんな・・わからない。それに・・・」

「それに・・・私は一人でいい」

「まだ引きずってるの」

「まだって・・・」

「加奈子に何がわかるの?」

「わかるよ。どれだけ真理が辛いのか・・・
 どれだけ、苦しんでいるあなたを見てきたか。あなたが一番つらいかもしれない。でも・・・
 ここにいる4人も辛いんだよ・・・」

(みんな辛い・・・そっかみんな優志のこと・・・)

「良樹さんは部下。一哉さんは親友で同期。あなたは婚約者。私はその3人をずっと見てきたの
 みんなが悪いんじゃないよ・・・みんな自分をこれ以上責めないで・・・」

加奈子がうっすら涙を浮かべながら真理に伝えた。

「次に進もう真理。昔みたいに笑っている真理が見たいの。
 あの会社で真理が辛そうにしているのを・・見るのが・・もうつらいの。真理。ごめんね」
 
加奈子は泣きながら、言った。

「大切な人を失って・・楽しい時間を奪われて・・生きてく目標失って・・笑えって・・
 それができるなら・・ごめん、加奈子・・・」

(加奈子ごめんなさい・・・私って最低よね・・・)

「ごめん・・・帰る」

席を立った時、良樹さんに腕をつかまれた・・・

(何で、良樹さん・・・)

「座ろう」

いつになく真剣な顔の良樹さん。あんな顔つき見たことがなかった。

その言葉に何も言えず、座りなおした。
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