幸せになっていいですか
5時・・・・。

就業のチャイムが鳴った。

「お疲れさま~」とあちこちから聞こえる。

「飲みに行くやつ手あげろ~」恒例の飲み会の始まりの合図だった。

「真理さんは行きますよね。今日で暫くお別れだし・・・」

「・・・じゃ少しだけ」

1課総出の飲み会になってしまった。玄関に行くと、いつもの声が・・

「え?新藤さんも行くんすか?」

「当たり前だろ。俺の奥さんも行くし」その言葉でみんなから冷やかされた。

「ここで言いなや・・あほ」と独り言を言ってしまった。

「あほって・・」一哉がそれを聞いて笑った。

「はいはい。そこのバカップル!早く歩きなさい!」後ろから聞こえてきた声・・・

「加奈子!」万遍の笑みでこっちに歩いて来た。

「それにしても、一哉さん、増々心配性になってない?」

「なんで?」

「飲み会までくるなんて・・仕事は?」

「今夜はもうやめた」

「やれやれ・・これがうちの社長?ったく・・どれだけ妻思いなのか」

「って良樹さんのほうが凄いだろ?」

「もう慣れたわ」と笑っていた。

こんな会話をしていても、遠くで加奈子を見ている良樹さん。愛されてるなと思った。

幸せな二人を見てこっちの頬が緩んでくる。

「めずらしい、真理の笑顔」その声にみんながこっちを見た。

恥ずかしくなって、一哉を引っ張り急いで玄関をでた。

隣でくすくすと笑う一哉と歩きながら、少し顔が熱くなっている自分が恥ずかしかった。
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