幸せになっていいですか
夜景を見ながら無言のままだった。暫くして、一哉が話そうとした時、

真理も一緒になった。

「どうぞ」

「いえ。そちらから」

「さっき話で出てきた彼は?今夜は来ないの?」

「はい。きません」

「さみしいね」

「いいんです。私のリフレッシュなんで」

「そうか・・・」

「新藤さんは何を言いかけたの?」

「僕は、真理さんのことは知っている。ってこと」

「えっ?」

「何処であったかは言いません。真理さんはいつも悲しい顔をしているのが気になって」

「私の何を知っているの?」

(少し恐怖を感じた・・・。これ以上無理・・帰ろう。)

「泣き顔の真理さん。タバコを吸いながらため息つく真理さん
 一生懸命笑おうとする真理さん。
 休憩室の真理さん。何処か寂しそうで、悲しそうで・・・
 仮面をかぶった真理さん。」

(見られたの新藤さんだったんだ・・・)

「何で・・・何故?そんな私を知っているの?・・・」

「僕は・・同じ会社にいるから・・・あいつの同期だから・・・」

「あいつ・・・え・・・優志の?・・・」

一瞬にして顔色が無くなっていく自分に気づく。

気持ちが混乱しようとしている。

(嘘がばれてる・・・)

「ごめん。悲しいこと思い出させて・・・そう僕は、優志の同期なんだ」

「・・・っ・・・」

(ダメだ涙が・・・ここで泣いてはダメ)

俯いたまま、何も言えなくなった。涙が下に向かって落ちていった。

無言で立って、その場を後にした・・・。

その後を一哉が追いかけて真理を捕まえた。

「真理さん。話がしたい」

「嫌。離して。お願い・・・離して」

「嫌だ。ここには僕の部屋があります。何もしません。ただあなたとお話がしたい」

「何も話なんてありません」

「もう。ほっといて」

走って、エレベーターに乗ろうとした瞬間、

真理の腕を無言で引っ張り自分の部屋へ連れてきた。

「無理に連れてきてすまない」

「何ですか!いきなり!私に何があるんですか!}

「ここなら、泣こうが叫ぼうがどうやってもいい
 でも話を聞いてほしい。僕はただそれだけだから・・・」

真理をソファーに座らせた。隣に座り、ネクタイを緩めた。
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