幸せになっていいですか
「ちゃんと話をしますから・・・」一哉は来ていたジャケットを抜いで横に置いた。

「そう・・・俺が・・・真理さん、あなたの人生を壊してしまった。
 あの時事故で死ぬのは俺だった・・・
 あの日の出張は俺が行く予定だった。それが・・・
 それが、俺の婚約者が突然我が儘のこと言い、俺が行けなくなってしまった。
 政略結婚だった。俺は、その婚約者のことは断れなかった。
 その時、優志に頼んだ。俺たちのプロジェクトだったから・・・」

「あの出張・・・」

「あの飛行機事故・・・あの・・・」

一哉も涙をためながら話をしていた・・・・・。

「ごめんなさい・・・真理さん
 俺はあなたの人生を狂わせてしまった・・・
 あの時優志から聞いていた・・・結婚するって・・・」

「言わないで・・・もうこれ以上・・・
 もう言わないで・・・あの人は帰ってこないから・・・」

「それから俺は婚約者との結婚をやめた。できなかった
 両親もわかってくれた。自分のせいだといつまでも責めていた子を見ているのも辛かったのだろう
 婚約者もわかってくれた。政略結婚だったのもわかっていたから・・・
 後から、弟と結婚したけどな」

「ということは、あなたは・・・」

「俺は新藤一哉。新藤グループの一族。
 でも大丈夫。俺は社長にはならない。弟が継いだから
 その代りにおれは身分を隠して、営業部にいるわけ
 俺と優志は親友だった。お互い家族も仲がいい
 だから真理さんが彼女になった時も一緒になって喜んだ
 紹介するとも言ってくれていた。
 なのに・・・なのに・・・」

一哉は天井を見上げ手で目元を隠した・・・。

頬に一筋流れた・・・

(優志のことで泣いている・・・この人も苦しかったのか・・・)
< 6 / 329 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop