嘘つきなポーカー 1【完】
「てかお前、夏休みどうすんの。」
薫は自転車を押しながら尋ねる。
薫が通りすぎる度に、女の通行人が振り向いて目を輝かせている。
「どうって、何もしないよ。足もこんなんだし。家でゆっくりする。」
由佳が答えると、薫は笑いながら言った。
「つまんねー夏休みだな。」
そこら中で、蝉が鳴き始めていた。
1週間という短い命を全うするように、必死に鳴き続けているようだ。
もう夕方の4時を回っているというのに、まだまだ日は暮れる様子を見せず、ジリジリと照り付けている。
由佳の額を、1滴の汗が伝った。
夏休みが、始まる――…。