嘘つきなポーカー 1【完】
そして薫から何の連絡もないまま夏休みも終わりに近付いたある日の夜のことだった。
由佳はソファに寝転びながら、もはや屍のような顔をしていた。
ただでさえ夜あまり眠れない人間だったが、薫のことも相まって、余計にぐっすりと眠れていない。
その時、由佳の携帯が鳴った。
由佳は勢いよくソファから起き上がった。
そして携帯のディスプレイを見る。
そこに表示されていたのは『小野寺薫』の文字。
由佳は安心と怒りと嬉しさが混ざったような何とも言えない気持ちが込み上げてくるのが分かった。
由佳は急いで電話を取ると、薫に文句を言おうと口を開きかけたが、その前に薫が先手を切った。
「玄関のドア開けてみ。」
薫は何の前振りもなくそう言う。
「はぁ?あんた、久しぶりに連絡してきたと思ったら、何訳の分かんないこと…」
「いいから、開けてみ。」
薫は由佳の言葉を遮って、そう言った。