嘘つきなポーカー 1【完】
由佳は文句を言いたいのを我慢して、玄関のドアを開けた。
するとそこには自転車に跨がりながら笑う、薫の姿があった。
「久しぶり。」
由佳はその顔を見て、何故だかとても安心した。
文句を言ってやろうと思っていたのに、久しぶりに薫の顔を目にしたら、そんな気分もどこかに飛んでしまった。
「乗れよ。」
薫はそう言って、自転車の後ろを指差す。
「え?」
「いいとこ連れてってやる。」
「いいとこって?」
「いいから黙って乗れよ。」
「でも私、足が……」
由佳がそう言うと、薫は大きくため息をつきながら自転車を降り、由佳の前までやって来た。
「これ、要らない。」
薫はそう言って由佳が持っていた松葉杖を取り上げた。
「ちょっ…」
由佳がバランスを崩して倒れそうになった時、薫が由佳を抱え、ひょいと持ち上げた。