嘘つきなポーカー 1【完】
「この方が手っ取り早い。」
薫は由佳を抱きかかえたまま、そう言った。
由佳は薫にお姫様抱っこされている形になった。
「ちょ、ちょっと!下ろして!」
「うるせーな。暴れんなよ。」
学年一のイケメン男子の薫にお姫様抱っこされるなんて学校中の女子にとっては憧れに違いないが、由佳にとってはただのありがた迷惑でしかなかった。
薫は抵抗する由佳を抱えたまま自転車のところまで来ると、自分の自転車の後ろに由佳を乗せた。
由佳にまるで拒否権はなさそうだ。
「しっかり掴まってろよー。」
薫は勢いよく自転車を発進させた。
「ちょっ…」
由佳はその勢いでバランスを崩しそうになり、ぎゅっと薫の腰に抱き付いた。
とても細い腰だった。
あれ、ちょっと痩せた――…?
由佳は何となくそう思った。