嘘つきなポーカー 1【完】
「ごめんな、心配かけて。」
薫はそう言って、寝息を立てて眠る由佳の顔に手を伸ばしたが、触れるか触れないかのところで思い止まって、手を引っ込めた。
暫く薫は空を見上げていた。
平常心を保つために、星の数を数えた。
「…ちゃん」
「ん?」
隣で由佳が何か寝言を言う声がして、薫は由佳のほうを見る。
「恭ちゃん…」
由佳の目からは涙がこぼれ落ちていた。
薫の胸の中がまたざわついた。
だがそれは、先程の感じたざわつきとはまた別の種類のものな気がした。
「誰だよ、それ…。」
薫は曇った顔で呟いた。