嘘つきなポーカー 1【完】
学校に近付き、同じ学校の生徒の数が増えるにつれて、由佳に集められる視線の数も多くなっていくのが分かった。
もちろん、原因は隣を歩くイケメン男子のせいだ。
「おーおー、見てる見てる。」
呑気にそう言う薫の隣で、由佳は極力存在感を消そうと俯いて歩く。
だがあまりにも隣を歩くイケメンのオーラが強すぎて、由佳の努力は無駄でしかないのであった。
「小野寺くん、またあの子と登校してる…。」
「えー、付き合ってんのかな?」
「地味で可愛くもないくせに、ムカつくー。」
あのー、ヒソヒソ話、聞こえてますが――…。
由佳は聞かなかったことにして、黙って歩いた。
だけど薫がそばに居てくれるようになって良かったこともある。
薫が傍に居る間は、女子たちの直接的ないじめが無いことだ。
さすがの女子たちも、薫を目の前にして由佳に危害を加えられるほどの度胸はないようだ。
もちろん彼女たちの怒りのボルテージは上昇する一方だったが、薫の存在が彼女たちの由佳への攻撃を阻む盾になっていることは確かだった。
それを分かってか、はたまた無自覚なのかは分からないが、薫は常に由佳と一緒にいた。
クラス中の人間の視線が由佳と薫に向けられていた。
それどころか、他のクラスから様子を見に来る人もいた。
それほど薫の存在は学校の中でも目立っていたのだ。