嘘つきなポーカー 1【完】
その日の休み時間のことだった。
由佳は松葉杖をつきながら、立ち上がる。
「どこ行くんだよ。」
由佳の机の上に腰かけて携帯を触っていた薫が、どこかへ行こうとする由佳のほうを見て尋ねた。
「トイレぐらい行かせてよ。」
由佳がそう言うと薫は面白くなさそうな顔をしたが、何も言わずにまた携帯を触り始めたので、由佳にはそれが了解した合図だと分かった。
薫も流石にトイレまではついて来ることはない。
トイレを済ませると、由佳は教室に戻らずにいつもの非常階段に向かった。
廊下で何人かが由佳の顔を見てヒソヒソ話をしているのが分かったが、由佳は見なかったことにして気にせず歩いた。
非常階段の踊り場にたどり着くと、由佳は大きくため息を吐いた。
やっと1人でゆっくりできる――…。
最近は薫のこともそこまで嫌いではなくなった由佳だったが、やっぱりずっと一緒にいられると少し窮屈だ。
もとより由佳は1人が好きなのだから。