嘘つきなポーカー 1【完】
その時、背後で非常階段のドアが開く音がして、由佳は驚いて振り返った。
「あんた、せっかく1人の時間を楽しもうと思ったのに、また付いてき……」
全部言い終わる前に、由佳は驚いて目を見開いた。
「薫だとでも思ったの?」
そこに居たのは、薫ではなく遠藤奈津子とその取り巻きだった。
「なんで…。」
「何でこの場所が分かったかって?あんたの後をつけて来ただけ。自分が置かれてる立場も知らないで、よくのこのこと1人で歩けるよね。薫がいなきゃ何も出来ないくせに。」
「……。」
「驚いた顔して、ウケる。あんたでもそんな顔出来たんだ。いつもロボットみたいに無表情だったあんたがね。」
「………。」
「もしかして、薫のこと好きになったの?その身分で?」
「………。」
「なんか話せよ!」
奈津子はそう言って由佳の肩をぐいと押した。
由佳の手から松葉杖が落ち、由佳は間一髪で階段の手すりに掴まった。