嘘つきなポーカー 1【完】
奈津子は続けた。
その声は少し震えていた。
「薫はね、あんたのことが好きなわけじゃない。あんたに同情してるだけ。」
「……。」
「薫は何とも思ってない人にでも優しく出来る、ある意味最低な男なの。あんたは自分が特別だと思ってるの?違う。そうじゃない。」
「……。」
「あんた、薫とキスしたことある?エッチしたことある?私はあるわよ。」
「……別に私はあいつのこと何とも思ってないし、そんなのどうでもいい。」
由佳がそう呟くと、奈津子の可愛らしい顔が激しく歪んだ。
そして奈津子は由佳の頬を思い切り叩いた。
「だったら薫に近寄らないで!!!」
奈津子の目から、大粒の涙が零れ落ちた。
「私は薫のことが好きだった。…だけど、薫は私のことを好きになってくれなかった…っ。どんなに頼んでも、”好き”の一言だけは絶対に言ってくれなかった…っ。」
奈津子の目からはとめどなく涙が流れ落ちた。
「だけど私はそれでも良かった。それでも薫のことが好きだった。私は薫のために可愛くなる努力を怠らなかった。いつか薫に振り向いてもらえるように、”好き”って言ってもらえるように…っ。」