嘘つきなポーカー 1【完】
5章 臆病者の勇気
華代は辺りをキョロキョロと見回していた。
今からすることは絶対に誰にもバレてはいけないのだ。
静まり返った放課後の靴箱前。
見渡したところ、周りには誰もいない。
きっと皆もう帰ってしまったに違いない。
部活に励む生徒の声が遠くから聞こえてくる。
華代は自分の手に持った紙に目を落とした。
それは今日の授業の内容が書かれたノートのコピーだ。
今日、由佳が授業に出ていなかった。
華代はそれが気になって仕方なかったのだ。
最近の由佳は授業への出席率が悪い。
元々授業をサボるようなタイプではなかった由佳が授業に来ない原因は、少なからず自分にもあると華代は考えていた。
「笠原さん、真面目だし…きっとノート欲しいよね。」
華代はそう呟いて、丁寧に書かれたノートのコピーを由佳の靴箱の中にそっと置いた。
「よかった。まだ靴があるし、帰ってないみたい。」
華代はほっと安堵のため息を吐いた。