嘘つきなポーカー 1【完】
「何!」
「お前、何怒ってんの。」
「怒ってない!」
「ほら、怒ってんじゃん。」
由佳がまた無視して歩き始めた時、背後で薫が言った。
「守ってやれなくてごめんな。」
薫の言葉に、由佳は立ち止まり、振り向いた。
「正義の味方になるって言ったのに、お前を怪我させちまった。ヒーロー失格だな俺。」
薫はそう言って、由佳の頬の傷を指でなぞった。
そんな薫に少しドキッとしてしまった由佳は悔しくなって呟いた。
「……つく。」
「え?何?」
「ムカつく!!!」
「何でだよ。」
「優しい奴なのか嫌な奴なのかはっきりしろ!!!」
「はぁ?」
由佳と薫が言い合う声が、夕暮れの道路にこだました。
その様子を見ている人物が居るとは、2人は知るよしもなかった――…。
「久しぶりだね、由佳。僕以外の
前であんな無防備な姿を見せるなんて、許さないからね――…。」