嘘つきなポーカー 1【完】
「何?」
由佳の気配に気付いた恭平は、冷たくそう尋ねた。
かつての優しい恭平の面影はどこにもなかった。
「えっと…これ届けてって頼まれたから…」
「ふーん。そこに置いといて。」
「…うん、邪魔してごめん。」
そう答えた由佳の声は震えていた。
ぽとり、と俯いた由佳の目から涙が零れた。
それを見た恭平が大きくため息をつく。
「泣けば心配してくれる、なんて思わないでよ。」
「……。」
「いつまでも子供じゃないんだ。」
「……。」
「もうお遊びには付き合っていられない。」
「…恭ちゃん。」
「気安く呼ぶなよ。」
「ごめん…。」
由佳は消えるような声で呟いた。
そして恭平は由佳を鋭い目付きで睨み付けると、冷たく言い放った。
「もう僕に関わらないでくれ。」
そう言い残して、女の肩を抱きながら遠くへ消えていく恭平の後ろ姿を、由佳はいつまでも眺めていた。