嘘つきなポーカー 1【完】
8章 歪んだ愛情
次の日の朝、由佳は玄関の鏡の前で大きく深呼吸をした。
鏡に映った由佳の瞳は、どこか輝きを欠いていた。
由佳は玄関の扉を恐る恐る開けた。
そこにいつも居るはずの薫の姿はなかった。
それでいい。
由佳はそう思った。
由佳の虚ろな目が青く澄んだ空を映した。
まるで全てをリセットすると決めた由佳の心を表しているようだった。
学校が近付く頃になると、由佳を見つけた武城高校の生徒たちが口々に話すのが聞こえた。
「あの子、今日は小野寺くんと一緒じゃないんだ。」
「小野寺くんなら違う女の子と一緒に居たよ。」
「振られたんじゃね?」
由佳は耳に入ってくるそんな声に反応することもなく、無表情で通り過ぎる。
いつの間にか開いてしまった感情の鍵を、1つ1つ閉じるように。