嘘つきなポーカー 1【完】
そこには、脇腹から血を流しながら恭平の腕を掴む薫の姿があった。
「てめぇの相手は俺だろ。余所見すんじゃねぇ。」
薫は鋭い眼差しで恭平を睨みながら、そう言った。
「由佳ちゃん、ここから飛び降りるよ。」
フードの男が発したその一言で、由佳は我に返った。
「えっ、でもここ2階…」
「しっかり掴まって!行くよ!」
由佳の言葉を遮ってフードの男はそう言うと、2階の窓から由佳を抱えたまま飛び降りた。
由佳はフードの男に掴まったまま、ぎゅっと目を閉じた。
「由佳!!!」
窓の向こう側で、恭平がそう叫ぶのが聞こえた。