嘘つきなポーカー 1【完】
ケイと連絡を取るようになってからおよそ1ヶ月が過ぎたある日のことだった。
「あんた、最近より一層ムカつくんですけど。」
ある日の休み時間、奈津子とそのグループの女子たちが由佳の席の隣に来てそう言い放った。
由佳は相変わらず窓の外を見ながら聞こえないふりをする。
「ちょっと、聞いてんの!?」
奈津子は怒ったようにそう言って、由佳の髪を思いっきり引っ張り、自分のほうを向かせた。
由佳は黙ったまま奈津子の目をぼーっと見つめた。
すると奈津子は物凄い形相をしながら、由佳の頬を思い切り拳で殴った。
由佳の口の中に血の味が広がる。
「おーおー、奈津子ちゃん。可愛い女の子が人をグーで殴っちゃうなんてダメだぞっ。」
桐島が奈津子をそう茶化すと、奈津子はふんと鼻で笑って桐島の隣に居た学年一のモテ男、小野寺薫に向かって言う。
「ねぇ薫。手、怪我しちゃった。」
奈津子がそう言って薫の腕に抱き着くと、薫は奈津子の肩をポンポンと叩き、言った。
「お前の綺麗な手が汚れんぞ。」
薫と奈津子は付き合っている、という噂は学校内でも有名だった。
2人ともまるで芸能人のような見た目で、2人で校内を歩いているととても目立ったからだ。
見た目からしてとてもお似合いのカップルで、誰も文句を言う人は居なかった。
中身は2人とも、腐ってるけど――…。
由佳は心の中でそう呟いた。