嘘つきなポーカー 1【完】


恭平は、瑠美の言う「あの子」が由佳のことを指しているとすぐに分かった。


三上はおそらく分かっているのだ。
月日が流れた今でも、変わらない恭平の気持ちを。


だが三上は由佳を見たことがあるはずだ。
いくら時間が過ぎたとはいえ、瑠美と間違えるなどあり得ない。


「三上は?」


恭平の口から三上の名前が出ると、アジトにいたメンバー全員の目付きが変わった。


「まだ来てない。多分私と恭平が一緒に居たところを見て下っ端が間違えたんだと思う。」

「すぐに向かう。」

「待って!三上が私のことを見たら別人だってことに気付くはず。そうすれば、三上はきっとあの子を探す。だからあなたは、あの子を守ってあげて。」

「おら、いつまでコソコソ話してんだよ!」


受話器の向こうから男の怒鳴り声が聞こえてきたと思うと、男は瑠美から電話を取り上げ「そういうことだ。」とだけ言い残して、電話を切った。

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