嘘つきなポーカー 1【完】
薫はずっと黙ったままだ。
恭平は続ける。
「僕はすぐに事情があって武城高校に転校したいと申し出た。我ながら勉強は得意だし、高校にも一応行っていたから、そこは案外簡単にクリア出来たけどね。」
「……。」
そして恭平は、もう一度大きくため息をついた。
「由佳を守りたい、なんてきっとただの口実だったんだと思う。本当は由佳が君のものになるのが嫌だったんだ。」
「……。」
「僕のダメなところだ。大人なフリをする。本当は由佳が大好きで、由佳のそばに居たくてたまらないのに。」
「……。」
「僕は君が羨ましかったよ。あの時僕も、身を引くのではなく、君のように立ち向かって由佳を守ることができていれば…ってね。」
恭平はそう言うと、薫の目を見て呟いた。
「気の済むまで殴りなよ。それが済んだら、僕は約束通り由佳の前から消えるよ。」