嘘つきなポーカー 1【完】
言われてみれば、ケイの声はどこかで聞いたことがあったような気もした。
だけど誰だったかなんて、由佳にははっきり分からなかった。
だが今の電話で、もやもやとしていたものがはっきりとした物に変わった。
聞いたことがあったような気がしたケイの声は、小野寺薫の声だったのだ。
そして由佳は考えを再び巡らせる。
何のために薫は自分に電話をかけてきたのだろうか。
何のためにこんなことをしようとしたのだろうか。
そして暫く考えた後、結論が出る。
「……ハメられた。」
薫が由佳の味方ではないことは、普段の態度から明らかだった。
薫はいじめられる由佳を見て面白そうに笑っていたし、仲の良い桐島と一緒になって心無い言葉を浴びせてきたりもした。
それに何を隠そう、小野寺薫は由佳の最大の敵、遠藤奈津子の彼氏だ。
由佳は罠に引っかかったのだ。
きっと薫は味方のふりをして由佳に近付き、そして奈津子に由佳の情報を手渡そうとしたに違いない。
いや、もしかしたら騙される由佳を面白がって見ていたのかもしれない。
そう考えると、由佳は笑いがこみ上げてきた。
それは騙された自分に対する悔しさや、情けなさ、そして薫への怒りなど、色んな感情が合わさってこみ上げたものだった。