嘘つきなポーカー 1【完】
「もしあいつが本当に最低な奴だったとしたら、俺は今ここで生きていない。」
「……っ。」
「あいつが俺に攻撃するのを躊躇ったおかげて、俺は生きてる。」
「……。」
「あいつは相当屈折した奴だが、そこまで悪い奴ではないと思うよ。」
薫はそう言うと、由佳の身体をそっと離して、由佳の目を見つめた。
「それに、お前の味方はあいつだけじゃない。俺だって、木村だって、松本先生だって居るだろ。」
そして薫は由佳の頭をポンポンと優しく叩くと、優しく笑って言った。
「だからもう1人だと思うな。」
その温かい一言に、由佳は今まで我慢していた感情の決壊が壊れたように涙が溢れ出した。
薫はそんな由佳の泣き顔を見て、「不細工な顔。」と笑った。