嘘つきなポーカー 1【完】
そして冷静になって考えてみた時、とても厄介なことになったと思った。
奈津子はともかく、これから薫とどんな顔をして顔を合わせたらいいのだろう。
ケイ、もとい小野寺薫は、あまりにも由佳のことを知りすぎていた。
由佳が普段学校では見せない顔を彼は知っていた。
ケイと電話で話すようになってから、由佳は自分の思想や価値観など、多くのことをケイに語って来た。
由佳はなんだかとても恥ずかしい気持ちになってきて、教室に戻る気も起きなかった。
由佳はその日、教室に戻らずにそのまま家に帰った。
家に帰ってからも由佳の頭はケイ、もとい小野寺薫のことでいっぱいだった。
もちろん、夕飯を作る気力などどこにも無かった。
考えれば考えるほど騙されていた自分が情けなくなった。
そして、信じていたはずのケイに裏切られた悲しみも同時にこみ上げて来ていた。
「最低…。」
由佳はそう呟いて、ソファの上に丸まった。
その時、由佳の携帯が鳴った。
画面に表示されているのは『ケイ』の文字。
一体彼は何を考えているんだろう。
正体がバレてもなお、由佳と関わろうとするこの男の神経が由佳には理解できなかった。