嘘つきなポーカー 1【完】
だが由佳は手のひらを突き出して、答える。
「いい。1人で帰れる。」
どういうわけか、由佳は薫の顔を直視できなかった。
「華代、料理すごく美味しかった。皆も、楽しかったよ。ありがとう。」
そして由佳は「じゃあ皆、楽しんで。」と言い残し、逃げるようにしてその場を去った。
用事があるなんて本当は嘘だ。
本当は一刻も早く、この場から抜け出したかった。
何だか由佳はこの場に居たくないと思ってしまった。
このままここに居続けると、何かに押し潰されそうな気がしてならなかったのだ。
由佳は冷たい風の吹き付ける道を、1人黙々と歩いた。
先程の薫と奈津子のキスシーンが何度も由佳の頭に浮かんだが、その度に由佳はそれを振り払った。