嘘つきなポーカー 1【完】
そんな時だった。
「笠原!」
後ろでそう呼ぶ声が聞こえて、由佳は思わず歩いていた足を止めた。
何故か由佳の心臓がトクンと音を立てる。
だが由佳は後ろを振り返ることなく、何も聞かなかったかのように再び足を進めた。
「おい、待てよ!」
後ろからそう呼び掛けられるのも無視して、由佳は歩く足を速めた。
「待てっつってんだろ。」
由佳は後ろから肩をぐいと引かれ、無理矢理後ろを向かされた。
そこには怒ったような表情の、薫が立っていた。
由佳はその姿を見て、少し嬉しいと思ってしまう。
「ついて来なくていいって言ったじゃん。」
言葉はその気持ちとは裏腹に、素直ではない。