嘘つきなポーカー 1【完】
「お前、何で逃げんの。」
真剣な眼差しで由佳をじっと見つめながらそう言う薫に、由佳は目を逸らす。
「別に逃げてなんかない。」
「じゃあ目逸らすなよ。」
由佳はゆっくりと薫の目を見る。
その吸い込まれそうな綺麗な瞳に、由佳の胸が異様なほどに音を立て始める。
「用事があるなんて嘘だろ?」
「……。」
「何で俺から逃げようとすんの?」
「…別に逃げてないよ。ただ、あんな光景見ちゃったから、気まずいというか…」
「あれは俺の意思じゃない。お前も聞いてただろ?」
薫はため息をつきながら言う。
「そうだけど…」
「そうだけど、何?」
「……。」
その時、薫が家の塀に由佳をドンと押し付け、由佳の顔の横に手をついた。