嘘つきなポーカー 1【完】


「小野寺薫なんて大嫌い!もう近寄らないで!」


由佳はそう言い残し、猛ダッシュでその場を離れた。

途中、後ろを振り返ったが、薫が追いかけてくる気配はなかった。


「何なの、もう…」


由佳は呟いた。

薫の真剣な眼差しと、近付いてくる綺麗な顔を思い出して、由佳は胸が締め付けられるような感覚に包まれた。


その時、華代が少し前に言っていた言葉がフラッシュバックする。



―― その人のことを考えるだけで胸がキューっとなったり、他の子と居るのを見て嫉妬しちゃったりしたことないの?


「そんなんじゃない!」


由佳はそう言って自分に言い聞かせた。


それでも由佳は、速くなる胸の鼓動を抑えることが出来なかった。


< 367 / 451 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop