嘘つきなポーカー 1【完】


由佳と奈津子は近所の神社に初詣に出かけた。

奈津子は由佳の隣で他愛もない話を繰り広げ、由佳はそれに「うんうん。」と相槌を打つばかりだった。


だが、奈津子の話の内容のほとんどが由佳の頭には入っていなかった。

全て右から左だ。



―― きっと薫はあんたに同情したのよ。


先程の奈津子の言葉が、由佳の頭の中で繰り返し反響する。

何の気無しに奈津子が発したその言葉に、何故か由佳の胸はチクチクと痛んだ。


「私、甘酒取ってくるね。あんたはここで待ってて。」

「あぁ、うん。」


上の空だった由佳は、奈津子の一言で我に返る。

奈津子はそう言うと、向こうの方で振る舞われている甘酒の行列に並びに行った。




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