嘘つきなポーカー 1【完】
「何か思い悩んでおるな?」
どこかから突然そう声を掛けられ、由佳は声のする方に目を向けた。
そこには紫色の着物に身を包んだ白髪で皺だらけのお婆さんが、由佳の方をじっと見つめながら座っていた。
そばには「占い」と書かれた看板が立ててある。
「行き場のない感情に途方に暮れてるようじゃな。」
「……はい。」
由佳がそう答えると、老婆は一息置いて、静かに呟いた。
「それは恋じゃよ。」
その言葉に、由佳の背筋を何かが走る感じがした。
「お主は恋をしておる。だがそれに気付いておらぬ。そんな顔じゃ。」
「……。」
「あたしにもそういう時代があった。想い人は、戦争で兵に出て死んでしまったけどねぇ。」
老婆は遠くを見ながら昔を懐かしむように呟いた。