嘘つきなポーカー 1【完】
由佳は授業に集中出来なかった。
理由は1つ。
斜め右後ろから痛いぐらいに感じる、怒りの視線だ。
由佳は必死に気付かぬふりをしようとしたが、薫から発されるドス黒いオーラを無かったことにすることは不可能に近かった。
1限目が終わると、薫がガタンと椅子から立ち上がる音がした。
来る――…!
由佳はそう思った。
その瞬間、由佳は急いで立ち上がり、ものすごい勢いで教室を飛び出した。
そして由佳は女子トイレに駆け込む。
さすがに薫も、女子トイレまでは追いかけて来ない。
由佳は大きくため息をついた。
「何やってんだろ、私…。」
由佳はトイレの便座の上に腰掛けながら、休み時間を潰した。
そして授業が始まるチャイムが鳴ると同時に教室に戻り、薫に話し掛ける隙を与えない。
由佳は毎時間、これを繰り返した。