嘘つきなポーカー 1【完】
そしてその日以来、由佳は薫にとにかく自ら進んで話し掛けた。
今日の天気についてや、昨日テレビでやっていた話、家の庭に野良猫がやって来たこと…今までだったら考えられないぐらい、由佳はくだらないことを薫に話した。
あまりの由佳の変貌ぶりに、奈津子と和也には「大丈夫?いきなりどうしたの?」と心配された。
薫は一応由佳の話を聞いてくれているようで、たまに相槌を打ってくれた。
そして由佳が昨日の夕飯に賞味期限切れの納豆を食べたらお腹を壊した話をし終わった時、薫は訝しげに尋ねた。
「お前、一体何企んでんの?」
「…え?」
「突然べらべら喋りすぎ。キャラじゃねーし、必死感漂ってるし。」
「…そうかな?そんなことないよ!」
由佳はそう言って笑う。
だがおそらくその笑顔も引きつっているに違いない。
「もう関わらないんじゃなかったの。」
薫の言葉に、由佳の心臓がトクンと鳴った。
「…やっぱり、仲直りしたくて。」