嘘つきなポーカー 1【完】
始業のチャイムが鳴り担任の渡辺先生が教室に入ってくると、生徒たちはぞろぞろと席に着いた。
「はい、さっさと席に着けー。今日は休み前にやった抜き打ちテストを返すぞー。」
気怠そうにそう言って持っていた紙袋からテストの束を出し始めた渡辺先生を見て、生徒たちは口々に文句を言い始める。
「えー、哲ちゃん!休み明け早々そりゃないよー!」
ムードメーカーの桐島和也が渡辺先生に向かってそう言うと、渡辺先生は「桐島、うるさいぞー。」と言いながら出席番号順に名前を呼び始めた。
「笠原由佳ー。」
自分の名前が呼ばれて由佳が教卓まで歩いていくと、渡辺先生が由佳の足元を見ながら言った。
「笠原、そのスリッパはどうした?」
「あ…えっと…、上履きを失くしました。」
由佳がそう答えると、クラス中の人がクスクスと可笑しそうに笑った。
「またか?お前、よく上履き失くすなぁ。探しとけよー。」
渡辺先生は呑気にそう言って、由佳にテストを手渡す。
すると由佳の後ろに並んでいた桐島が、ふざけたような声で言った。
「もう!由佳ちゃんはお茶目さんなんだからぁ!」
するとクラス中が爆笑の渦に包まれ、由佳は黙って俯いた。