嘘つきなポーカー 1【完】
その時、机の上に置いてあった携帯が鳴った。
滅多に鳴らないその音に驚いて、由佳は思わずびくっとなった。
由佳が画面を覗くと、そこには久しぶりに目にする『ケイ』の名前が表示されていた。
ケイの正体が小野寺薫と知った日以来だ。
そう言えば、結局番号消すの忘れてそのままだったな――…。
由佳は少し考えた後、電話に出た。
「もしもし…。」
「もしもし。俺。」
電話の向こうから聞こえてくるのは、ケイの声。
だが、今の由佳にとってはそれは小野寺薫の声でしかなかった。
「どうよ、調子は。」
「うん、熱は下がった。」
「そか。」
そして暫く沈黙が続いた。
ケイとして話していた時はあんなにも話が尽きなかったのに、薫だと思うと由佳はどうしても何を話せばいいのか分からなくなってしまう。
「なんか、こうやってお前と電話するの久しぶりだな。」
薫が口を開いた。