嘘つきなポーカー 1【完】


由佳と薫が校門を抜け、校舎の中に入る頃には、校内がちょっとした騒ぎになっていた。

当然だ。
学校一のアイドルが、訳のわからない女と突然一緒に登校し始めたのだから。



「おい、地味な女と小野寺薫が一緒に登校してるぞ!」
「噂によると、林間学校で小野寺くんがいじめられてたあの女のことを助けたらしいよ。」
「えー!ウソ!?信じらんない!ショックー!」
「何あの女!ブスじゃん!」



由佳の耳に次々と入ってくる周囲の言葉に、由佳は耳鳴りがしそうだった。
もちろん、それは不愉快なものばかりだったわけだが。


そんな言葉が耳に入っていないのか、はたまた聞き流しているだけなのか、小野寺薫は相変わらず興味のなさそうな顔をしながら隣で陽気に鼻歌を歌っている。


彼は毎日こんな視線を浴びながら登校していたのかと思うと、由佳は少し薫を尊敬した。


「イケメンは毎日大変だね…。」

「まぁな。」


否定もすることなくさらっとそう答えた薫に由佳は少し殺意が沸いたが、聞かなかったことにした。



「それより、お前のほうが大変なんじゃね?」


薫がそう言って顎で指した方向には、派手な女子の集団が気に食わない形相で何かをこそこそと話している姿があった。

確かあの女子たちは、遠藤奈津子の取り巻きだ。











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