嘘つきなポーカー 1【完】
「ちょっと薫、どういうことなのか説明して。」
奈津子の問いかけに、薫は平然とした様子で答える。
「そのままだ。つまり、俺は今日からお前がこいつをいじめるのを許さないってこと。」
薫は由佳を指差しながら奈津子に向かってそう言った。
「なんで?どうして?薫は私たちの味方だったでしょ!?」
「じゃあ俺は今日からは正義の味方になるよ。」
薫がそう言った瞬間、奈津子が右手で薫の頬を思い切り叩いた。
ざわついていた教室が一瞬静まり返った。
奈津子は歯を食いしばって、目に涙を溜めていた。
薫はそんな奈津子の姿を見て少し驚いた様子を見せたが、すぐに冷静な顔をして言った。
「ごめんだけど、お前の要望には応えられない。」
薫のその言葉に、奈津子は涙を流しながらスカートを翻し、小走りで教室を去って行った。
奈津子の取り巻きがその後を追うように教室を出ていく。
桐島は一瞬薫に何か言いたげな様子を見せたが、何も言わずに奈津子の後を追いかけていった。