嘘つきなポーカー 1【完】
由佳ははっと目を覚ました。
どうやら非常階段に座り込んだまま、寝てしまっていたらしい。
「やばい、授業行かないと。ねぇ、小野寺かお…」
そう言って薫が寝ていた踊り場に目をやったが、そこには薫の姿はもう無かった。
そして由佳は携帯に表示された現在の時刻を見て目を丸くすることになる。
時計はもうすでに午後4時前を指していた。
「えー!?もう授業終わってんじゃん!」
由佳は3時間近くもここで昼寝をしていたことになる。
由佳は焦って、勢いよく立ち上がろうとした。
その瞬間、自分の足に痛みを感じた。
由佳の右足には痛々しいギブスがはめられている。
そうだ、骨折してたんだった――…。
「何、あいつ…。起こしてくれたっていいのに!」
由佳はそう言うと、松葉杖を使ってよいしょと立ち上がった。
その時、階段の踊り場に忘れられている黒い腕時計が由佳の目に入った。
「ん?これ、小野寺薫のかな。」
由佳は時計を手に取ると、ポケットの中にしまった。
明日、渡してあげようっと――…。