嘘つきなポーカー 1【完】
が、違った。
入学した時から一度も、由佳は1位になったことがなかった。
毎回貼り出されるテストの順位表の一番上には決まって同じ名前があった。
「小野寺薫…。」
小野寺薫。彼はこの学校で誰よりも成績が良かった。
それもダントツだ。
それだけではない。
彼はまるで芸能人のように整った顔をしており、そして運動神経も抜群だった。
全てにおいて完璧な彼の噂は、校内でも有名だった。
当然、彼の女子からの人気は絶大だった。
学校中の女子が、彼の名前を口にした。
だが彼はそんなことを気にする様子もなく、いつも涼しい顔をしている。
由佳とは無縁の世界にいる人間だった。
彼の周りにはいつも人が居て、そして皆が彼の味方だ。
勉強ぐらい、勝ちたかったな――…。
勉強だけは自信があった由佳は、心の中でそう呟いた。