嘘つきなポーカー 1【完】
帰る道中、由佳は少し先のほうで汗を流しながら大きな段ボール箱を抱えて歩く見覚えのある後ろ姿を見つけた。
マズイ、と由佳は思った。
綺麗な長い髪、細くて長い足、真っ白な肌。
それは紛れもなく遠藤奈津子だったからだ。
由佳がいることがバレてしまったら、きっと何か嫌がらせを受けるに違いない。
ましてや今は薫が傍に居ないのだから、由佳をいじめる絶好のチャンスだ。
由佳はどこかに隠れようと思ったが、生憎隠れられるような場所は見当たらなかった。
奈津子は、由佳の存在にまだ気付いていなかった。
それどころか、両手に抱えた段ボール箱を運ぶことに必死で、気付く気配すら感じられない。
「今日バイトって言ってなかったっけ…」
由佳は教室で聞こえてきた女子集団と奈津子の会話を思い出した。
これが奈津子のバイトなのだろうか?
だが奈津子は明らかに制服姿のままだ。