優しくないっ、優しさを感じない!


あたしは教室に戻って、自分の席から窓の外を眺めた。

うちの教室は3階にあるから窓からはグラウンドが見える。この間たまたま忘れ物を取りに戻った時に覗いてみて、それで野球部が練習してる所もバッチリ見えるんだという気付いてはいけなかったはずの事実に気付いてしまった訳だ。


「あー、やっぱりコースケカッコいい…っ!」


なーんて、グラウンドの方で見る勇気も無いあたしは、教室からこっそり眺めて満足したら帰宅…なんて事をここ最近していたりして、正直結構気持ち悪いなと我ながら思ってる。

…でもね、気付いちゃったらね、やめられないんだよ本当。だってカッコいいの。部活最高!野球最高!これぞ青春!って、帰宅部のあたしとしては心から叫びたい。




***




あー、今日も良いの見たなぁ…!と、一通り満足したあたしは置いていた鞄を持ちあげて、よいしょっと席を立った。


そして今日のご飯は何だろな〜なんて呑気に考えながら教室を出て、なんかいっつもそんな事考えてる気がする…と気付きながら階段を下り始める。

いやいや!それよりコースケの事でしょ!と、自分に突っ込みながら鞄を開けて、取り出したポーチについているボタンを眺めながら足を進めた。ふふ。いやぁ本当、ボタン大事にしないとね…なんてレナちゃんとの会話を思い出して、ぷぷっと吹き出しながらボタンをつついてみる。…すると、


ポロッ、


コンッ、コンッ、コンーー


< 10 / 310 >

この作品をシェア

pagetop