優しくないっ、優しさを感じない!


「でもさ、こんな世界あたしにも遠いけど、進藤だったらもっとはるか彼方の話だよね」

「…でも、ああ見えて結構礼儀にはうるさい所あるからなぁ」

「えぇ〜?人にあれだけ失礼な事しておいて〜?ないないそれは無い‼︎ 」

「うーん。きっとヒロちゃんに心を開いてるからだと思うんだけど…」

「いやいやいや!心開いてるとかそんな可愛いもんじゃない…って、あれ?レナちゃん、進藤の事詳しいね」

「え?あ…えっと、進藤、君とはその…学校が一緒だったから…」

「え、そうだったの⁈ なんだ、初めて知った!」


そしてあたしが「言ってくれればよかったのにー」と声掛けると、レナちゃんは「ごめんね…」と、やけに申し訳なさそうにするもんだから、いやいや、いいんだよ!と手をヒラヒラ振って答えた。でも驚いたなぁ…今度進藤にも聞いてみよう、なんて密かに思う。


「あ、ほらヒロちゃん!休憩みたいだよ!」


レナちゃんの言葉であたしは、進藤の事からもう一度野球部の方へと意識を戻した。すると確かに今までのピリッとした雰囲気とは違ってガヤガヤしたものになっていて、個々に部員達はばらけて行き…


「あれ?コースケは?」


なんて、バラバラとグラウンドから出てくる部員達を眺めながらレナちゃんに尋ねた、その時だった。


「おう、何?探してくれてた?」


…思いもよらない距離で聞こえてきた、その声。


「 バレないようにこっそり端から登ったんだよなー。驚いた?」


なんて、いたずらっ子感満載の可愛い笑顔を満面に振りまくコースケが、まさかのあたしのすぐ横に立っていた。

< 102 / 310 >

この作品をシェア

pagetop