優しくないっ、優しさを感じない!


……のに、だ。


結局進藤とはその後会う事も無く、あたしはそのまま何事も無く夏休みへと突入する事になった。進藤の連絡先?そんなの知らない、知るはずが無い。


「くそぉ…あの野郎…」


必要な時に居ないんだから本当。本当気が合わない。仲良くなんて絶対なれない。


「あーあ、何か損した気分」


そうぼやきながらお菓子を食べる夏休み突入から一週間の昼下がり。テレビではサスペンスドラマがやっていて、特にあたしは興味をひかれなかった。なのに他のチャンネルも似たようなもんで、あぁこの時間ってあたしの居るべき時間じゃないんだな、なんて思う。あぁーもうほんと、


「暇だ暇だ暇だー‼︎ 」

「うるさいなぁ、聞こえないでしょう?」


同じくお菓子を貪りながら隣でサスペンスドラマに夢中のお母さんが、邪魔臭そうにあたしに言った。そんなに面白いかコレ。こんなにあたしが暇で死にそうだってのに。

なんて文句を言うと、返って来たのは「だったら宿題でもすればいいでしょ」の言葉。あー毎年毎年もう聞き飽きた!


「ちょっとコンビニ行ってくる!」


そう言って、あたしは完全に着古したようなTシャツに部屋着感丸出しのショートパンツ、そして毎年お馴染みのビーチサンダルを履いて家を出た。ただ暇潰しに近所のコンビニに行くだけだ、恥ずかしさなんてカケラも無い。

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