優しくないっ、優しさを感じない!
階段に響き渡るその音。それは…あ、あたしのボタン。あたしの大切なボタン‼︎
「あーーーっ‼︎ 」
ポーチから取れたボタンは、その勢いのまま階段を跳ねながら落ちていく。それはまるであたしから全力で逃げようとしてるような勢いで…って、なんでよ!指で弾いたりつついたりしたから?だからなの?
嫌われてる!とショックに感じながらもあたしは慌てて追いかけた。ボタンに嫌われてるとしてもあたしにとっては大事な大事なボタンなのだ!これで無くなったりしたら泣ける!
「うわっ、もうどこ?どこまで落ちた⁈ 」
やけに勢いよく落ちていったそれ。キョロキョロ見渡しながら階段を下りていくと…それはちょうど3階と2階の踊り場の所だった。背の高い、茶色い髪の毛の男子生徒が一人立っているのが目に入る。
その人は何やらじっくりと右手に持った物を眺めているような素振りをしていて、もしやとあたしは遠目ながらにもその人の手元を確認してみると、そこには小さな見覚えのある丸いーー
「あ!あたしのボタンっ‼︎ 」
しっかりと認識した瞬間、思わず出た大声と共に手元のそれを指さしたあたし。するとボタンを手にしているその人は「あ、コレ?」と、首を傾げてあたしの方に振り返って、あたしは「そうそう!」と、その人の所まで急ぎ足で向かった。
どうやらボタンを拾ってくれたらしい。